• トップページ
  • 遠赤外線とは?
  • Q&A
  • 最新情報
  • 認定制度
  • 会員企業等の紹介
  • 刊行物紹介
  • 会報
  • 協会のご案内
  • その他の情報
  • お問い合わせ
  • 会員専用

遠赤外線とは?

  • 遠赤外線初めの一歩

  • 遠赤外線の特性

  • 利用分野

(4)遠赤外線はどうやって物質を温めるのだろうか?

 セラミックスヒータなどから放射された遠赤外線は、光と同じ速さ(約30万km/秒=1秒間に地球を7.5周する速さ)で空間を直進し、物質表面に当たります。
  遠赤外線の周波数光速÷波長)は、プラスチックス、塗料、繊維、木材、食品や人間を含む動物を形成している分子の振動とぴったり合うので、これらの物質に照射された遠赤外線は吸収され、構成要素である分子の振動を活発にして、温度上昇を招くわけです。
  物質の分子振動周波数が遠赤外線の領域と一致していることが、遠赤外線が加熱・乾燥分野で広く利用される理由なのです。遠赤外線以外の周波数(波長)では、「周波数(波長)が合わない」ので、こういう効果が小さいのです。


図3 物質の分子振動模式図

(5)遠赤外線は、人の体に深く浸透するのだろうか?
ガラスを透過するのだろうか?

 「遠赤外線は体に深く浸透するので、体の芯から温かくなる」というように書かれた暖房器具の広告が見受けられますが、これは誤りです。遠赤外線の持つエネルギーは、皮膚表面から約200μmの深さで、ほとんど吸収されてしまい、熱に変わります。(図4参照) その熱が血液などにより体の内部(芯)まで効率よく伝わり体を温めているのです。
  図4に示すように近赤外線は、皮膚表面から数ミリメートルの深さまで浸透します。この特徴を使い、指や手のひら内部の静脈模様を近赤外線で調べることで個人を認証する方法が、最近、銀行などで導入されています。
  プラスチックスや植物、鉱物(石、ガラス、セラミックスなど)も遠赤外線をよく吸収し、吸収された遠赤外線は、表面でほとんど熱に変わり、透過することはありません。ガラスは、可視光線が透過するので、遠赤外線も透過すると思われがちですが、間違いです。
  また、水やアルコールなども遠赤外線をよく吸収し、1mmの厚みがあれば、そこでほとんど吸収され、透過することはありません。
  表面が光った(酸化していない)金属は、遠赤外線をよく反射します。遠赤外暖房機のヒータ背面に金属板が設置されているのは、前面にできるだけ遠赤外線を反射・集中させるためです。


図4 人の皮膚の赤外領域透過特性
注)N.Terada et al,”Spectral radiative proper of a living human body”,
International Journal of Thermophys., vol.7, pp.1101-1113, 1986.

図5 水の赤外吸収波長依存性
渡辺敦夫,清水賢,”食品工業における電磁波の知用(1),”
化学技術誌MOL, pp.120-128, 昭和63年2月.

(6)放射率とは?

 遠赤外線を知るには「放射率」を理解する必要があります。ある温度の物質表面から放射するエネルギー量と、同温度の黒体(放射で与えられたエネルギーを100%吸収する仮想物体)から放射するエネルギー量との比率を放射率といいます。
  放射率は、物質によって異なり、物質固有のものですが、その表面状態(粗度など)でも変化します。また、波長によっても変わります。
  一般に、セラミックス(金属の酸化物なども含む)は、遠赤外域での放射率が高く(約0.7~0.9)、エネルギーを有効に放射できることから、遠赤外線の放射材料として広く利用されています。
  一方、酸化していない金属表面の放射率は、一般に非常に低い値を示します。(研磨アルミニウムの場合、約0.05)
  ヒータの放射率測定法は、当協会が中心になって原案を作成したJIS R 1801「遠赤外ヒータに放射部材として用いられるセラミックスのFTIRによる分光放射率の測定方法」に定められています。
(注:「FTIR」とは、フーリエ変換赤外分光光度計(Fourier transform infrared spectrophotometer)のことです。)
  図6に石英の分光放射エネルギー密度と分光放射率のデータを、図7に市販されている2種類の遠赤外ヒータの分光放射率データを示します。(a)は遠赤外域全体にわたって高い放射率を示すヒータ、(b)は短波長域で低い放射率を示すヒータの例です。
  全ての波長域で分光放射率が高いヒータ部材が、良いというものではありません。一般的に、被加熱物の吸収パターンにあった放射特性を実現するヒータが良いと言われています。


図6 常温域における石英の分光放射特性

図7 ヒータ放射部材の分光放射率(代表的な2例)

(7)熱はどのように伝わるの:三つの熱の伝わり方(伝熱

 熱は温度の高い方から低い方へ伝わります。これが原則です。熱の伝わり方には、伝導、対流、そして放射の三つの方式があります。しかしながら、実際の状況ではこの三つの方式が組み合わされた形で熱の伝達が行われます。

伝導伝熱

金属棒の先端を加熱すると次第に熱が伝わり他端まで熱くなります。このように熱が物質を伝わっていくことを伝導伝熱といいます。
  物質により熱伝導率は異なります。金属類は熱の良導体です。気体は、一般に、低熱伝導体です。したがって、多孔質の物質は、緻密質の物質より熱伝導が低くなります。


図8(a) 伝導伝熱

対流伝熱

 水や空気など(液体や気体)は、下から加熱されると温まった部分が膨張して密度が低くなり上昇し、冷たい上の部分が下降します。この作用が繰り返し行われ、全体が温度上昇します。
 このように液体や気体が移動することで、熱を伝える方法を対流といいます。


図8(b) 対流伝熱

放射伝熱

 太陽熱(電磁波)が直接地上に到達し地球を温めているように、中間に媒体を必要としない熱の伝わり方を放射伝熱といいます。このとき熱は電磁波の形で直接物質に吸収され、物質の温度を上昇させます。(物質を形成する原子相互の振動を活発にさせる)遠赤外線の伝熱がまさに放射伝熱です。
  中間媒体に気体が存在する場合、それが窒素(N)や酸素(O)の場合は、遠赤外線は吸収されませんが、炭酸ガス(CO)や水蒸気(HO)のような極性を持った気体には吸収されます。


図8(c) 放射伝熱

(8)放射に関する三つの基本法則

プランクの法則

 物質はその温度に応じたエネルギーを電磁波の形で放射しています。放射されるエネルギーは、温度により、物質により、またその表面状態などにより変化します。図9は、黒体の放射エネルギーと波長の関係を示したもので、プランクの法則と呼ばれます。
 一般の物質では放射率が1以下になります。したがって、黒体と同一温度の物質の分光放射エネルギー特性は、黒体の示すそれ(図9の山形曲線)より下側に、曲線が描かれることになります。


図9 各温度における黒体からの放射量(プランクの法則)

ステファンボルツマンの法則

 物質から放射されるエネルギー量は、図9で示されるように、物質の温度が高くなるにつれて大きくなります。絶対温度T(単位:ケルビンK)の黒体から放射されるエネルギー量(E)は、プランクの法則を全波長に対して積分することで得られ、絶対温度の4乗に比例する形で与えられます。これをステファンボルツマンの法則といいます。

E=5.6697×10-8・T [W/m2]

ウィーンの変位則

 物質から放射される電磁波のピーク波長(一番エネルギーの高いところ)は、放射体の温度が高くなるにつれて、短波長側にシフトします。(図9参照)

λ=2897/T [μm]
これをウィーンの変位則といいます。例えば、36℃(絶対温度T=36+273=309K)の体温を持った人間が放射する電磁波のピーク波長(λ)は、2897÷309=9.4μmとなります。即ち、人間は、約9.4μmをピークとした遠赤外線を放射しているわけです。
  ウィーンの変位則で示されるピーク波長を境に短波長側の積算面積(エネルギー)は、全体エネルギーの25%で、長波長側は75%です。即ち、長波長側(遠赤外域側)が、3倍のエネルギーを放射していることになります。
  それでは、絶対温度T(K)の黒体で、その放射エネルギーを2分する波長(λ)はどこかというと、λ=4,108/T [μm]という式で求められます。
  例えば、近赤外域と遠赤外域の境目波長3μmのところで、放射エネルギーが50%ずつに分かれる黒体温度Tは、T=4,108/3=1,369(K)(=1,369-273)=1,096℃となります。かなり高温まで遠赤外線が、高いウェイトを占めていることが分かります。また、この時のピーク波長は2,897/1,369=2.1μmで、当然ながら近赤外域にあります。

(9)遠赤外加熱(放射伝熱)の特徴

 物質を遠赤外ヒータで加熱する場合、ヒータから物質へそれぞれの温度(絶対温度K)を4乗した値の差に比例した熱が流れます。ヒータの温度は、常に物質よりかなり高く維持できますので、熱流は加熱期間中あまり変化せず維持されます。熱がどんどん物質へ流入しますので、効率の良い加熱ができるわけです。(図10(a)参照)
 一方、熱風加熱などの場合には、熱風温度と物質表面温度の差に比例した熱流が流れます。 この場合にはすぐに物質表面温度が熱風温度に近づくので、両者の温度差が無くなり、熱流は低下し、熱流はなかなか物質へ入っていかなくなります。(図10(b)参照) 加熱効率を上げるために、無理に熱風温度を上げると、物質表面を焦がしたりする弊害が出るようになります。熱板による加熱(伝導)についても、熱風加熱と同様のことが生じます。


(a) 遠赤外加熱
(b) 熱風加熱
図10 遠赤外外加熱と熱風加熱との熱の流れ方の違い

(10)遠赤外線加工繊維の特徴

 繊維は、身の回りの物質の中でも、遠赤外線の吸収や再放射の特性が高い物質です。「遠赤外線加工繊維」とは、遠赤外線を吸収、及び再放射しやすいセラミックスなどの物質を、化学繊維の場合は繊維の内部に練り込んだり、天然繊維では繊維の外部にコーティングを施したりして、元の繊維よりもより広い波長範囲の遠赤外線に対して吸収・再放射特性を高めて、保温性を向上させた繊維をいいます。
  遠赤外線加工を施した繊維と施さない未加工の繊維の放射率を測定すると、加工済みの繊維の方が、明らかに遠赤外線の吸収・再放射特性が向上していることがわかります。また、保温性も高まります。保温性の向上は、図11に示す着用後における実際の皮膚温度測定で、加工済の繊維を用いたものの方が高い皮膚温を示すという結果で検証されています。


図11 下着の遠赤外線加工有無による皮膚温度差

(11)遠赤外線協会の認定制度

 非営利・一般社団法人 遠赤外線協会では、家電・ガス器具に続いて、1997年に繊維分野の認定制度を創設しました。目的は消費者保護、遠赤外線の利用の促進、健全な遠赤外線産業の育成です。すでに多くの製品に、図12に示す当協会の認定マークが付けられています。


(a)加熱分野
(b)保湿分野
図12 2つの協会認定マーク
参考資料
  • 木村嘉孝:遠赤外線協会会報、「遠赤外線の基礎」(1)(1997年第4号)~(20)(2000年第4号)
  • 日本電熱協会遠赤外線委員会編:「遠赤外線の理論と実際」(平成3年3月、㈱オーム社発行)
  • 清水賢等編集:「遠赤外線の最新技術とその応用」(1991年1月、㈱技術情報センター発行)
  • 高田紘一、江川芳信、佐々木久夫編:「実用遠赤外線」(1992年2月、㈱人間と歴史社発行)
  • 東北電力冊子:「遠赤外加熱」(1990年11月、日本電熱協会発行)
  • JIS Z 8117:2002:「遠赤外線用語」(平成14年3月、(財)日本規格協会発行)
  • JIS R 1801:2002:「遠赤外ヒータに放射部材として用いられるセラミックスのFTIRによる分光放射率測定方法」
    (平成14年3月、(財)日本規格協会発行)
  • JIS R 1803:2005:「遠赤外ヒータの遠赤外域における分光放射エネルギーの測定法」
    (平成17年3月、(財)日本規格協会発行)(注:上記3つのJISは、当協会が原案を作成いたしました。)
  • (社)遠赤外線協会リーフレット:「遠赤外乾燥」(遠赤外加熱解説シリーズ.2)
  • (社)遠赤外線協会リーフレット:「遠赤外線」冬の日溜りの暖かさ!(加工繊維製品類